2002.2.2
表現の方法も発表の仕方も時代と共に変化している。今や500円で作品を発表し、東京ビックサイトで展覧会が開催できる時代である。今回は、毎年春と秋の2回東京ビックサイトで開催される「デザインフェスタ」なるイベントを探検した。 |
ホールの中は 歩くスペース以外すべてブースです。左を見ると「ハイ ブース。」右を見ても「ハイ ブース。」 それぞれのブースからアート、デザイン、アクセサリーなど ジャンルを問わずオリジナルな表現がムンムン発信されています。入り口を入って正面のブースには、頭からすっぽりとかぶるタイプの防毒マスクをした人が立っています。ブースの壁には、絵に描いたスパゲッティーのようなもの(模型だったかもしれない)がたくさん飾られている。この作家は、食物に対して何か警鐘を鳴らしているのか。それとも作者のパスタに対する嫌悪を防毒マスクで表現しているのか。とにかくここはアート系ブースであることがわかります。作者に確認しようかなと思ったのですが、やっぱり顔が見えないと 生のコミニケーションはとりづらいです。そのまま通り過ぎることにしましょう。そう思って後ろを振り向くと 入り口を入った両脇もブースになっています。右側のブースにはお子さま連れのお客さんが集まっています。露店風の作りで 台の上には紙で作ったカエルやカタツムリ、カメが並べられている。ペーパークラフトのお店です。パソコンで昆虫の型紙を作り、これをプリントアウトしたものです。種類も枚数もたくさん用意されていて 「趣味で作りました」というより「しっかり売らせていただきます。」という意気込みが感じられる商売っ気たっぷりのブースです。お客さんは、この型紙を説明に従って切り抜き組み立てて昆虫を作るわけです。私は、カメラを取り出してそれらの昆虫をパチリ!。そしてまたホール全体を見渡して思いました。「これは本当にお祭りだ。」 |
今回のデザインフェスタがいったいどれぐらいの来場者数になるのか想像もつきませんが 時には行き交う人と袖ふれあうほどの人混みになることもあります。だから出品されたものがおもしろいこともあれは、見ている人を見て おもしろく思ったりする場面も出てきます。それは一坪タイプのブースでのことです。そのブースは、モノクロ写真を展示したアート系ブースです。写真の中のひとつは、湖に浮かんだ小舟に少女が乗っているセピア調のモノクロ写真です。おそらく写真の女性の子供時代のものだと思います。他の写真には、裸の男女が絡み合った写真。また いわゆる「玩具」をもてあそぶヌードの女性など。そこには、女性美や肉体美もあるのですが、それ以上に性欲的な部分やその女性のすごく個人的な感性を表現した空間が作られていました。そしてそのブースの真ん中には看護婦さん姿の本人とおぼしき女性が座っていらっしゃるのです。「普段『裏』として扱われるジャンルを今回堂々と祭りの舞台に出してみました。」という感じです。この手の表現は、ジェフ・クーンとチッチョリーナがすでにベネチアビエンナーレという大舞台で発表していますから法的には全然問題ないと思います。私はその写真の魅力にとりつかれついついエッチな気持ちで鑑賞していました。するとあるアベックが写真を見に入ってきたのですが その時の二人の反応が印象的でした。女性がしげしげと一枚一枚の写真を見ていると、写真の内容に遅ればせながら感づいた男性が「これって、やばいんじゃないの。」そう言うや 女性の腕を引っ張って出ていってしまったのです。そんな人間丸出しの反応がおもしろくて しばらくそこで人間観察してみることにしました。その結果といいますか 予想通りといいますか、人は遠巻きに見るだけで ここの看護婦さんに話しかける人もいません。そう言う私も何もせず見ていただけなんですが。このブースも含めアート系展示ブースは デザインフェスタでは割と静かな存在です。まあ、そうでしょう。そういう性質のものですから。 それに引き替え 音の出るパフォーマンス系ブースは 2重3重に人の輪ができるほど盛況です。そのパフォーマーは、黒の革ジャンに革ズボン姿で 薄っぺらな金属を半田付けして作った大きなマシーンを抱きかかえ 音楽に合わせてジャカジャカジャカジャカと踊ります。マシーンには、スピーカーや電球やいろんなスイッチが内蔵されています。もう一つマシーンがあって、それは腕に装着しレコードが人差し指の下で回転するようになっています。人差し指は、レコード針を着けるようになっていて 踊りながらレコードを進めたり戻したりスクラッチしたり。さながら踊るDJです。時にはこの腕に着けるマシーンをお客さんが装着してレコードを回し、革ジャンの兄ちゃんがスピーカーを抱えて踊ります。マシーンがいかにも薄っぺらな金属でガチャガチャと騒がしい。それがまた見ていて楽しい。 とにかくCの最後のブースからスタートして Aの1番までとりあえず目を通した。それにしても よくこんなにも集まったものだと感心してしまうと同時に私は、疲れ切ってしまいました。疲れた頭で何となく感じたことですが、イラストを中心にしたポストカードや缶バッチ。パソコンを使って自前でデスクトップパブリッシングしたものが結構多いのです。もちろん手作りのファッション、絵画、書、アクセサリー、いっぱいあるけれど、パソコンの普及は、確実にデザイナーを増やしているようです。現にブースにパソコンを持ち込んで絵を描いている人が何人もいますから。 疲れた頭と体を癒すため ホール外の屋上展示場へ出ましょう。そこは野外ステージになっていて ちょうどバンドの入れ替えの最中でした。売店でビールを買い のどを潤しながら次の演奏を待ちます。しばらくするとアフリカの太鼓やトランペットとトロンボーンが加わった総勢11人のビックバンドの演奏が始まった。「ラッキー、このバンドは、管楽器がはいってる。管がはいると音に伸びが出て気持ちいいよなあ。おまけにキーボードが坂本龍一ときたもんだ。(すごく似ていた)」なんて思いながら 足でバンバンリズムを取り取り 体を揺すってノリノリです。演奏時間40分があっという間に過ぎていきました。 「あー、気持ちよかった。満足満足。それじゃ、帰ろかな。」 ビールで出来上がった私は、別に思い残すこともなく下りのエスカレーターに乗りました。 デザインフェスタとは要するに、誰でも参加できる美術系大学の学園祭ですね。お祭りは、見に来るよりも参加して馬鹿騒ぎするほうが楽しいに決まってます。見るだけでは、その楽しさの半分も味わえません。ましてや、分析したり考えたりしに行く場所ではありません。私も「探検隊」気取りで少し斜に構えすぎでした。 「アートだ、デザインだと分類して歩くよりバカになりなさい。」駅へ向かって歩いていく私の後ろ姿に 東京ビックサイトの逆立ちピラミッドがそう言っているようでした。。 さて、途中ちょっと話に出た「コミックシティー」のことです。この文章をまとめている最中に インターネットで検索してみると ありました。驚きました。「デザインフェスタ」の比ではありません。東京だけで年間8回のマンガ同人誌展示即売会を含め 全国各地でマンガコミック関係の大イベントを18回も開催しているのです。私がこの時覗いた会場は、8回の展示即売会のうちの一つです。そのサイトをのぞきながら、マンガ界のすそ野の広さに驚きました。認識不足でした。「マンガ 恐るべし。コミック 恐るべし。」 |