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2002.2.2

 表現の方法も発表の仕方も時代と共に変化している。今や500円で作品を発表し、東京ビックサイトで展覧会が開催できる時代である。今回は、毎年春と秋の2回東京ビックサイトで開催される「デザインフェスタ」なるイベントを探検した。
 「デザインフェスタ?。知らないよ。」とおっしゃる方は、NARIのサイト「展覧会」のコンテンツにある「植物的な形、デザインフェスタギャラリーへいく。」をご覧ください。そのギャラリーは、原宿にあるデザインフェスタの事務所兼ギャラリーです。
 その事務所が 毎年2回「デザインフェスタ」というイベントを企画してます。
私もデザインフェスタギャラリーでの作品設置がなければ、「デザインフェスタ」というイベントを知らなかったはずです。しかし、作品設置をきっかけに イベントのことを知ってしまった。「知った」といっても デザインやアートを集めた2日間のイベントが東京ビックサイトで開催される。ということだけで、中身は、まるっきり知りません。知らなくてもいいのですが、ギャラリーを何度か訪れているうちに ちょっと見てみようかな。という気になってきた。
 なぜ そんな気になったのか。
 デザインフェスタギャラリーは、アパートを改造して作ったギャラリーです。12畳の広さから4.5畳の広さまで 展示室が12室。部屋としての空間の他に「アートピース」という80cm×80cmのレンタル壁面が35ある。その1スペースは一日500円です。つまり500円で展覧会が開ける。アートピース以外の空間も3日間から借りることができ、平日と休日の値段設定がある上に1週間借りると割安になる。小さな部屋なら3日間で15,000円で借りられる。「オリジナル作品であれば審査は、一切ありません。作品の販売も自由。展示だけに限らず、何でも歓迎します。」ということで ちょこっと作って ちょこっと発表することのできる場所です。JR原宿駅からこのギャラリーへくる場合、途中竹下通りを通ってくることになりますが その雑貨屋の延長線上にこのギャラリーがあるように思います。だから、竹下通りのヤング・ヤンガー・ヤンゲストが原宿の雑貨屋を見て歩くのと同じようにここを訪れる。そして気に入ったものがあれば ちょこっと作品を購入していく。作品を買われた作家にしてみれば たとえその価格が200円でも3点売れれば もう場所代を稼いでしまえるのである。
 そういうのを見ていると、ちょっと考えてしまったんです。「個展を開くには、30万円必要で この30万円のために食べたいものも食べず着たい物も着ず 汗水たらして働き 作品制作もおぼつかなくなる。そんな思いをして作品を発表しても 作品は一点も売れず、『芸術の道のりは遠い。売るなんて100年早い。』と自分に言い聞かせて 今日まで生きてきた私の人生観・作品発表観は、何だったんだと。」
 ここは、ひとつ4000人近い人が集まって、表現を繰り広げるという「デザインフェスタ」も見ておいた方がいいのではないか。
 加えて、ギャラリーの方のおっしゃるには、「イベントに参加した作家の中から、名のある画廊にスカウトされて 展覧会を企画されたというような話や、作品が認められて、購入されたりデザインの仕事の発注を受けたりする人が随分いるんですよ。」とのこと。「随分」とおっしゃったのか、「たまに」とおっしゃったのかは、記憶にございませんが、とにかくデザインフェスタは今 すごいことになっているらしい。ということで、2001年11月24日25日に開催された「デザインフェスタ VOL14」を探検してきました。
 
 青梅から東京ビックサイトへは、JR青梅線で立川へ。立川で中央線に乗り換え、東京へ。東京駅で山手線に乗り換え新橋へ。新橋で新交通ゆりかもめに乗り換え 国際展示場で下車。山に住む人間が海を見ると わくわくしてきます。特に貨物船やコンテナ、コンテナを積み卸しする大型クレーンが見えてくると 窓から身を乗り出して眺めてしまう。ゆりかもめは、東京湾を渡ってお台場へ。「有明、お台場、トレンディー。イエイ、イエイ。」と臨海新都心の建物と空き地を眺めているうちに国際展示場に到着する。
 「国際展示場」駅から東京ビックサイトへは、ただ歩いていれば着きます。「東京ビックサイト」は、4つのピラミッドが逆立ちをした建物です。目立ちます。4つのピラミッドの逆立ちといえばといえば東京ビックサイト。東京ビックサイトといえば4つのピラミッドの逆立ちと言っていいほど 他に類を見ない形です。しかも大きい。敷地面積243419.46平方m。そう言われてもさっぱりイメージできません。こういう数字の横には、「東京ドーム何個分」と書いておいてほしいものです。今や東京ドームは、面積や体積の単位として確固たる地位を確立しているのですから。さて、実際建物に入ってみると、ピラミッドの逆立ち部分は、東京ビックサイトの会議棟で、建物全体のほんの一部でしかないことがわかります。
 とりあえずその逆立ちピラミッドの方へ人が流れていく。私も歩いていく。すると「チケットチケット、余ったチケット、チケットチケット、余ったチケット」と背中に龍の刺繍がはいったロングコートのおじさんが 人の流れに向かって声を発している。駅前の立て看板には「ダフ屋行為禁止」「○○警察署」と書かれている。だからそのおじさんがダフ屋かどうかは、今ここで断定するのは差し控えます。ただ、この手の余剰チケット買い取り販売に携わる方々は、主にスポーツ・音楽・芸能関係のイベントで見かけることが多い。それらのイベントでは、チケットの販売枚数も何万枚と発行される為 中には使われないチケットが生まれる。それらのチケットをチケットとしてまっとうさせるため 最前線で日夜努力なさっているのが この手の方々である。そして今 目の前のおじさんが手にしているチケットは、紛れもなく「デザインフェスタ」のチケットだ。つまり「デザインフェスタ」は 何千何万人規模のスポーツ音楽イベントに匹敵する大イベントということになる。私の知る限り、アート系イベントで余剰チケット業者を見かけるのは、歴史的大作家や歴史的名画の展覧会(例えばゴッホやレオナルドダビンチのモナリザ)会場周辺である。見本市的なアート系イベントとしては、「NICAF(ニカフ)」がある。そこにも何度か足を運んだが 余剰チケット販売業者を見かけたことはなかった。ところが一人とはいえ「デザインフェスタ」にこの手の人がいた。私の「デザインフェスタ」への認識が甘かったのではないか。よほど気を引き締めてかからなければとんでもないことになりそうだ。
 さて、驚いてばかりいられない。私は、「デザインフェスタ」の取材に来た。取材できることは、何でも取材したい。おじさんの手にしたチケットの枚数から判断すると相当な時間ここにいらっしゃった様子である。今日はどれぐらいの人が入ったのか、もし、昨日も立っていらっしゃったなら 昨日の様子はどうだったのか。しかし、いくら「デザインフェスタ」つながりとは言え 見ず知らずの人にいきなり声をかけるのは、失礼である。運良く私は余分なチケットを一枚持っている。この一枚を元にいろんな話を聞ければ このチケットも浮かばれるというものだ。意を決して私は、声をかけた。
私、「おじさん。チケットってこれでいいの?。」
おじさん、「ああ、いいよ。」
私、「ところで 人、入ってますか?。」
おじさん、「結構入ってるね。朝から立ってるけど 2千は入ってるよ。入り口は、向こうにもあるから 倍は入ってるね。」
私、「おじさんは、このイベントにはいつも出るの?。」
おじさん、「いや、今回が初めてだけど、結構人が入るんで驚いてるのよ。」
私、「評判は、どうなんですか?」
おじさん、「なかなかいいらしいよ。」
私、「昨日も立ってたんですか?。」
おじさん、「ああ、昨日も出てたけど、結構入ってたね。でも今日の方が多いかな。じゃ、これでいいかな。」
 おじさんは、そういって私にいくらかの硬貨を手渡し、また人の流れに向かって声を発し始めた。私は、「話が聞ければ お金なんていらないのに。」と思いつつ それを言葉には出せず、その硬貨をポケットに納めました。
 さて、おじさんの話を要約すると
「デザインフェスタは、おじさんの予想を超えて小遣い稼ぎになった。つまりイベントとしては、まあまあの入りってとこ。内容には、興味ない。」ということだろうか。
 さて、余剰チケット業のおじさんを後にして 3分も歩くと東京ビックサイトのエントランスホールにたどり着く。ここで入場者は東展示棟と西展示棟に分かれる。目指す「デザインフェスタ VOL14」は西展示棟で開催されている。ところが人の流れは、西ばかりではなく東へも流れていく。それを見て、はたと気づいた。ちょっと考えれば想像がつきそうなものを わたしは、愚かにもこの日の開催イベントは、「デザインフェスタ VOL14」だけだと思いこんでいたのです。この時点で私は、ここまでの取材データの修正を余儀なくされたのでした。
 ところで、デザインフェスタの向こうを張って 同じ日程でイベントを開催するなんて 一体どんなイベントだろう。ちょうど目の前には、「i」のマーク。インフォメーションカウンターがある。カウンターの中には、「ここのことは、何でも私に聞いてくださいね。」と おねえさんが座っていらっしゃる。声をかけなければ失礼です。
「すいません。ちょっとお尋ねします。(もうちょっとスマートな尋ね方はないものでしょうか?まるで都会に不慣れなおじいさんが道を尋ねているようだ。)今日ここで開催されているイベントは、いくつあるんですか?。」
「東展示棟の『コミックシティー イン 東京94』、西展示棟の『デザインフェスタ』と『・・・・・』です。」と 優しく(でも事務的に)答えてくださる。おねえさんが最後に言った『・・・・・』は、招待客だけのイベントで 人の入りも少なく 私はその場でその名称を頭から消去した。問題は、エントランスホールへたどり着いた人のほぼ半数が、西には目もくれず向かっていく東展示棟の『コミックシティー イン 東京94』だ。「これは、絶対調査しておかねばならない。」私の中の単なる興味本位の気持ちがむくむくと責任感へと成長していた。私は、すでに「デザインフェスタ」と化していたのである。インフォメーションカウンターでもらった資料によると「アマチュア同人誌の展示即売会」と記されているが 詳細がつかめない。
 私は、あえてデザインフェスタへの西展示棟へは向かわず 北コンコースとブリッジを経て東展示棟へ進路を取った。さて、「コミックシティー イン東京」とは何か。会場が近づくにつれ、人溜まりが増えてくる。コミックシティー入り口周辺のベンチでは、人々が薄い冊子を手に一心に読みふけっている。歩く人も冊子を入れたと思われる手提げ袋を手にしている。入り口には、「コミックシティー イン東京94」と書かれた看板だけで他に飾り気がない。会場へ入るためには、入場券を購入するのではなく、入り口でパンフレットを購入する。「デザインフェスタ」探検を控えた私は、今ここでコミックシティーへの入場は、避けるべきだろう。従ってここは、入り口から中の様子を見るだけにする。会場は、長机が何列かに並べられ その机に同人誌と思われる冊子が積まれている。それらの机の一つ一つが出品者のブースになっているらしい。人は、机から机へと同人誌を見て歩き 気に入ったものを購入する。各ブース(机)は人寄せの音楽が鳴り響くわけでも コンパニオンガールが同人誌を持って笑みを浮かべているわけでもない。天井も壁もそのまま。とにかく机と冊子と人だけの至ってシンプルな会場である。各出展者が「自分の作ったコミックを読んでもらえたら それでいいんです。」という感じで それぞれの作品への自信がうかがえます。人の多さにもかかわらず 静かな熱気に満ちたイベントなのです。そして私は、一般的な展示会のイメージからすると ちょっと地味なその会場の雰囲気に「『コミックシティー』おそるるに足らず。」と判断し その場を去りました。(シマヅ君、喧嘩しているわけじゃないんだよ。) しかしこの時 私はまだ「コミックシティー」の、いや「コミック・マンガ界」のすごさを知らなかったのでした。
 さて、エントランスホールに戻り いよいよ「デザインフェスタVOL14」へ入場します。西展示棟の4階全部がデザインフェスタ会場です。エスカレーター乗り場周辺のオブジェや大看板が すでにデザインフェスタしています。
 エスカレーターに乗る前にチケットを切ってもらい 一気に4階へ。乗ってしまったら、「ちょっと待って。忘れ物しました。」なんて言っていられません。東京ビックサイトへ入る前から聞こえていた野外ライブの音が 今はガンガンと響きます。エスカレーターを降りると 親切に案内板が出ています。ブースの配置図・野外ライブのタイムテーブルが表示してあるのですが、なんといっても圧巻はブースの配置図です。そのブースの配置図から ホールがA・B・Cと三つのエリアに分かれ それぞれのエリアにおよそ400ずつのブースが配置されていることがわかります。これからその1198のブースを一つ一つ探検しなければならないのかと思うと 私は一瞬立ちくらみしそうになりました。駅の売店でオロナミンCを飲んでおけばよかったと今更後悔しても 後の祭り。目の前の祭りは 今日が最終日。残された時間は、あと5時間。ぐずぐずしてはいられない。さっそく探検開始。と言ってもどこから始めればいいのだ。そこで私は、エスカレーターを降りて一番近いCエリアの最後のブースからの探検を開始しました。

 ホールの中は 歩くスペース以外すべてブースです。左を見ると「ハイ ブース。」右を見ても「ハイ ブース。」 それぞれのブースからアート、デザイン、アクセサリーなど ジャンルを問わずオリジナルな表現がムンムン発信されています。入り口を入って正面のブースには、頭からすっぽりとかぶるタイプの防毒マスクをした人が立っています。ブースの壁には、絵に描いたスパゲッティーのようなもの(模型だったかもしれない)がたくさん飾られている。この作家は、食物に対して何か警鐘を鳴らしているのか。それとも作者のパスタに対する嫌悪を防毒マスクで表現しているのか。とにかくここはアート系ブースであることがわかります。作者に確認しようかなと思ったのですが、やっぱり顔が見えないと 生のコミニケーションはとりづらいです。そのまま通り過ぎることにしましょう。そう思って後ろを振り向くと 入り口を入った両脇もブースになっています。右側のブースにはお子さま連れのお客さんが集まっています。露店風の作りで 台の上には紙で作ったカエルやカタツムリ、カメが並べられている。ペーパークラフトのお店です。パソコンで昆虫の型紙を作り、これをプリントアウトしたものです。種類も枚数もたくさん用意されていて 「趣味で作りました」というより「しっかり売らせていただきます。」という意気込みが感じられる商売っ気たっぷりのブースです。お客さんは、この型紙を説明に従って切り抜き組み立てて昆虫を作るわけです。私は、カメラを取り出してそれらの昆虫をパチリ!。そしてまたホール全体を見渡して思いました。「これは本当にお祭りだ。」
 神社のお祭りでは、屋台や露店がでます。大きな神社になればなるほど屋台や露店が参道だけでは収まりきれず 神社の広場などに屋台・露店が所狭しと並び屋台村・露店街になることがあります。まさにそれ。そこは色とりどりで活気があって一歩足を踏み入れるとわくわくしてきます。けれど最初は、「あ、たこ焼き。わー、おいしそー。しかしうまいことひっくり返すもんやなー。次は、イカ焼き。この醤油の焦げた匂いがたまりません。次は、風船。最近の風船は、形が複雑になってきたなー。昔のようなゴム風船は、見かけないね。お、次は、おもちゃ屋か。おもちゃといえば銀玉鉄砲。そして次は、チョコバナナ。トッピングはアーモンド。」と一つ一つ丹念に見て歩くわけですが、しばらくすると前を通るだけで「たこ」「イカ」「おもちゃ」「風船」という風に お店を観念的に分類し よほど目新しいものや自分の興味の対象でない限り立ち止まらなくなります。
 デザインフェスタにおける私も同様でした。「そんなことで探検したといえるのか!。」と注意されそうですが、数を見ていくうちにどうしてもそうなってきます。それが人間という生き物の構造です。デザインフェスタのブースは、基本的に畳み1畳分のものと 2枚分つまり1坪分のものがあります。そのブースの前を私もついつい「はい、イラストね。」「はい、アクセサリー。」「はい、小物。」「またイラスト。」と分類して歩くだけになっていました。しかしさすがに出展数1200だけのことはあります。たまには私のアンテナがピピッと反応するブースがあります。最初に目に留まったブースは、パフォーマンス系だったのではないかと思える畳タイプのブースです。なぜ「だったのではないか」なのか。それは、パフォーマンスする人間がいないからです。一畳分のスペースに敷き布団が敷いてあり、人が抜け出した形のままの掛け布団が残っているのです。だから残された布団だけを見ると「アート系展示ブース」ともいえるのですが、布団の上に「寝ようと思ったけれど 寝られなかった。」と書いた紙切れが置いてあります。つい、隣でイラストを展示販売しているお兄さんに「ここの人は、朝からずっといないんですか?」と尋ねてしまいました。お兄さんは、困惑気味に「さあ、」と答えるだけで何もわからない様子です。よく考えれば 隣の人も他人のブースの質問ばかりされて いい迷惑ですよね。それにしても いろいろと想像がふくらむブースです。ひょっとしたら、それをねらって姿を消したのかもしれません。ただ寝ているだけでは、ホームレスと変わりませんからね。いや、ホームレスがデザインフェスタにお金を払ってまで人前で寝るようなことはしないです。「んー、やはりこれはアートだ。」そう思いつつ 次へ移りました。

 今回のデザインフェスタがいったいどれぐらいの来場者数になるのか想像もつきませんが 時には行き交う人と袖ふれあうほどの人混みになることもあります。だから出品されたものがおもしろいこともあれは、見ている人を見て おもしろく思ったりする場面も出てきます。それは一坪タイプのブースでのことです。そのブースは、モノクロ写真を展示したアート系ブースです。写真の中のひとつは、湖に浮かんだ小舟に少女が乗っているセピア調のモノクロ写真です。おそらく写真の女性の子供時代のものだと思います。他の写真には、裸の男女が絡み合った写真。また いわゆる「玩具」をもてあそぶヌードの女性など。そこには、女性美や肉体美もあるのですが、それ以上に性欲的な部分やその女性のすごく個人的な感性を表現した空間が作られていました。そしてそのブースの真ん中には看護婦さん姿の本人とおぼしき女性が座っていらっしゃるのです。「普段『裏』として扱われるジャンルを今回堂々と祭りの舞台に出してみました。」という感じです。この手の表現は、ジェフ・クーンとチッチョリーナがすでにベネチアビエンナーレという大舞台で発表していますから法的には全然問題ないと思います。私はその写真の魅力にとりつかれついついエッチな気持ちで鑑賞していました。するとあるアベックが写真を見に入ってきたのですが その時の二人の反応が印象的でした。女性がしげしげと一枚一枚の写真を見ていると、写真の内容に遅ればせながら感づいた男性が「これって、やばいんじゃないの。」そう言うや 女性の腕を引っ張って出ていってしまったのです。そんな人間丸出しの反応がおもしろくて しばらくそこで人間観察してみることにしました。その結果といいますか 予想通りといいますか、人は遠巻きに見るだけで ここの看護婦さんに話しかける人もいません。そう言う私も何もせず見ていただけなんですが。このブースも含めアート系展示ブースは デザインフェスタでは割と静かな存在です。まあ、そうでしょう。そういう性質のものですから。
 それに引き替え 音の出るパフォーマンス系ブースは 2重3重に人の輪ができるほど盛況です。そのパフォーマーは、黒の革ジャンに革ズボン姿で 薄っぺらな金属を半田付けして作った大きなマシーンを抱きかかえ 音楽に合わせてジャカジャカジャカジャカと踊ります。マシーンには、スピーカーや電球やいろんなスイッチが内蔵されています。もう一つマシーンがあって、それは腕に装着しレコードが人差し指の下で回転するようになっています。人差し指は、レコード針を着けるようになっていて 踊りながらレコードを進めたり戻したりスクラッチしたり。さながら踊るDJです。時にはこの腕に着けるマシーンをお客さんが装着してレコードを回し、革ジャンの兄ちゃんがスピーカーを抱えて踊ります。マシーンがいかにも薄っぺらな金属でガチャガチャと騒がしい。それがまた見ていて楽しい。
 とにかくCの最後のブースからスタートして Aの1番までとりあえず目を通した。それにしても よくこんなにも集まったものだと感心してしまうと同時に私は、疲れ切ってしまいました。疲れた頭で何となく感じたことですが、イラストを中心にしたポストカードや缶バッチ。パソコンを使って自前でデスクトップパブリッシングしたものが結構多いのです。もちろん手作りのファッション、絵画、書、アクセサリー、いっぱいあるけれど、パソコンの普及は、確実にデザイナーを増やしているようです。現にブースにパソコンを持ち込んで絵を描いている人が何人もいますから。
 疲れた頭と体を癒すため ホール外の屋上展示場へ出ましょう。そこは野外ステージになっていて ちょうどバンドの入れ替えの最中でした。売店でビールを買い のどを潤しながら次の演奏を待ちます。しばらくするとアフリカの太鼓やトランペットとトロンボーンが加わった総勢11人のビックバンドの演奏が始まった。「ラッキー、このバンドは、管楽器がはいってる。管がはいると音に伸びが出て気持ちいいよなあ。おまけにキーボードが坂本龍一ときたもんだ。(すごく似ていた)」なんて思いながら 足でバンバンリズムを取り取り 体を揺すってノリノリです。演奏時間40分があっという間に過ぎていきました。
 「あー、気持ちよかった。満足満足。それじゃ、帰ろかな。」
 ビールで出来上がった私は、別に思い残すこともなく下りのエスカレーターに乗りました。
 デザインフェスタとは要するに、誰でも参加できる美術系大学の学園祭ですね。お祭りは、見に来るよりも参加して馬鹿騒ぎするほうが楽しいに決まってます。見るだけでは、その楽しさの半分も味わえません。ましてや、分析したり考えたりしに行く場所ではありません。私も「探検隊」気取りで少し斜に構えすぎでした。
 「アートだ、デザインだと分類して歩くよりバカになりなさい。」駅へ向かって歩いていく私の後ろ姿に 東京ビックサイトの逆立ちピラミッドがそう言っているようでした。。
 
 さて、途中ちょっと話に出た「コミックシティー」のことです。この文章をまとめている最中に インターネットで検索してみると ありました。驚きました。「デザインフェスタ」の比ではありません。東京だけで年間8回のマンガ同人誌展示即売会を含め 全国各地でマンガコミック関係の大イベントを18回も開催しているのです。私がこの時覗いた会場は、8回の展示即売会のうちの一つです。そのサイトをのぞきながら、マンガ界のすそ野の広さに驚きました。認識不足でした。「マンガ 恐るべし。コミック 恐るべし。」

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