売済
この桜は 1968年頃 この作品の芯の部分の姿で 新宿のとある児童養護施設の中庭に植えられました。そして施設の子どもたちと共に育ちます。春には花が別れと出会いを見守り 夏には木陰で子どもたちが涼をとりました。この作品の胴体の部分は すくすくと育った15歳の頃の桜の姿です。それから5年経った1985年 施設の増築工事に伴い 茂りすぎた枝が切られます。作品の胴体の枝のそれが まさにその時の切り口です。しかし 木はたくましい。桜は それからも枝を張り 幹を太らせ その施設とともに時を経ました。そして 2006年の夏 新たな増築と敷地の整備に伴い 長年その命を育んだ土から 幹が切りはなされることになりました。その最後の年輪が 作品の脚の外側です。
私は この桜にノミを入れその年輪を辿り この桜の過ごしたありし日の姿をさまざまに思い浮かべながら制作することができました。まるで桜の40年間を一緒に旅するように。
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